●こんなお話
家から出られない大学講師が宣教師とか娘さんとか介護士とかと会話する日々の話。
●感想
物語は、カメラを切ってオンライン授業をしている主人公から始まる。彼は極度の肥満体で、ベッドから立ち上がることすら困難。部屋から出ることもままならない日々を送っている。ある日、ひどく咳き込んで呼吸困難に陥る中、玄関の呼び鈴が鳴る。やってきたのは青年で、新興宗教の勧誘で訪れたという。主人公は彼に、ある本を読み聞かせてほしいと頼む。それは、死ぬ前にどうしても聞いておきたかった文章だった。
やがて看護師の女性が定期的に訪れるようになり、彼の体のケアをしてくれる。彼が過食によって心臓などに深刻なダメージを負い、もう長くないことが明かされる。看護師は、訪問を繰り返す宗教青年に対して強い嫌悪感を持っており、その宗教が原因で自身の家族が壊れてしまった過去を抱えている。青年自身もその信仰から離れつつあり、信者としての活動を通じて金を盗んでしまったという後ろめたい過去を抱えていた。
主人公には、かつて別れた娘がいる。娘は反発心から主人公と距離を置き、ある日突然部屋を訪れてはエッセイについての相談を持ちかける。彼女は父親に会いにきたというよりも、SNSで嘲笑するための写真を撮ったり、辛辣な態度をとったりと、複雑な感情をぶつけてくる。それでも主人公は、娘のことをずっと想い続けていた。
その後、かつての妻も訪れ、主人公の所持しているお金をすべて娘に渡してほしいと告げる。主人公は、娘のために特別なエッセイを書き上げ、それを授業ではなく“娘の人生のために”と託す。そして、死の直前、娘がそのエッセイを読むことで、かつて家族で訪れた海岸の記憶がよみがえっておしまい。
基本的に一つの部屋の中で展開される密室劇で、舞台劇のように人物同士の会話で物語が進んでいきます。120分間、変化の少ない空間にも関わらず、俳優の演技力と脚本の強さで最後までぐっと引き込まれる力がありました。お芝居の力を存分に感じられる作品で、見終わった後にじんわりと余韻が残る1作でした。
☆☆☆
鑑賞日:2024/03/14 WOWOW
監督 | ダーレン・アロノフスキー |
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脚本 | サミュエル・D・ハンター |
原案 | サミュエル・D・ハンター |
出演 | ブレンダン・フレイザー |
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セイディー・シンク | |
ホン・チャウ | |
タイ・シンプキンス | |
サマンサ・モートン |