映画【海と毒薬】感想(ネタバレ)

●こんなお話

　戦争末期に日本の大学であった捕虜の生体実験をする人たちの話。

●感想

　米軍が医療関係者を尋問しているところから始まって、1人ずつ証言していきます。奥田瑛二さん演じる医者はもう死ぬことが決まっているおばさんの患者に感情移入していて同僚の渡辺謙さんから「爆撃で死ぬのも病気で死ぬのも一緒なんだから」と否定される。

　元気だった若い婦人の手術をすることになって始めるけど、失敗して死んでしまう。亡くなったことを隠して翌朝死んだことにしようとミスを隠してしまう上司たち。

　看護師はドイツ人のお手伝いと上手く行っていなくて彼女とのモヤモヤがあってそれきっかけで病院が軍に協力することになり、軍の協力の手術があるから手伝ってくれと言われて手伝うことに。

　渡辺謙さんの証言で空襲して米兵が捕虜になったので生体実験が始まって肺を摘出して死亡するまで。1時間ちょっとで亡くなって軍人たちが患者の内臓を飲み会に持ってきてくれと頼んでおしまい。

　仰々しくなることなく淡々と出来事を映し出していくドキュメントタッチの作品でした。若い医師が米軍に尋問されていて回想していく。大学病院の出世争いがあって、主人公たち奥田瑛二さんと渡辺謙さんが自分たちの上司の手柄のために簡単だと思われてた手術をしたら医療ミスで死んじゃって、出世コースがライバルの第一外科に出遅れたと思っていたら軍隊からB29の捕虜を生体実験する話が出てきて、それを実行にうつしていく。

　良心の呵責に悩む奥田瑛二さんに1番感情移入できそうな配置ですが、渡辺謙さんのパートが1番興味深く見てしまいました。そして手術になると軍人たちが取り囲んで好奇心いっぱいで笑いながら覗き込んでいて、この人たち人間じゃないと1番嫌悪感を抱く役回りのキャラクターたちですが、リアルな手術シーンを好奇心で見ている自分がいて恐ろしかったです。

　医学のためにどうせ死ぬ人たちを生体実験するのが医療の発展のためな。B29で無差別爆撃する米兵だから。広島や長崎で原子爆弾を落としたではないか。と様々なことが語られていきます。

　善と悪。戦争の英雄と殺人。戦争中だから人間の良心は麻痺してしまうのだかろうか。と否応なしに考えさせる方向に引っ張ってくれる映画でした。

☆☆☆

鑑賞日： 2016/02/01 NETFLIX　2024/04/29 Hulu