映画【遠い道のり】感想(ネタバレ):台湾を舞台にした音と心の交錯劇

THE MOST DISTANT COURSE
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●こんなお話

 不倫をする女性とか台湾全土の音を録って音声技師とか精神科医たちの話。

●感想

 物語は、ある録音技師が撮影現場で突然解雇されるという出来事から始まります。職を失った彼は台湾中を旅しながら、さまざまな土地の音をカセットテープに収録していくという行動に出ます。その過程で、録音技師は自然の中に身を置き、音に耳を傾けることで、自らの存在や意味を模索しているようにも見えました。

 一方で、精神科医の男性は、売春婦との独特な性的関係に耽ったり、患者の話を聞き続けるうちに自身の精神も不安定になっていきます。さらに、もう一人の軸となるのは、不倫関係にある女性主人公。彼女は既婚男性と関係を続けるものの、相手は妻と別れる意思を見せず、関係に疲弊していきます。

 そんな中、彼女の家に差出人不明のカセットテープが届きます。カセットデッキを購入して再生してみると、それには台湾各地の風景音が記録されており、それが彼女の心を揺さぶります。どうやらテープは前の住民宛に届けられたもののようでしたが、それをきっかけに彼女は南部・台南方面への旅に出る決意をします。

 録音技師はある森の中で音を収録中に、隣接するモーテルでチンピラたちが襲撃を企てているという危険な場面に遭遇。そこで偶然、精神科医が美人局のような場面に巻き込まれた瞬間に鉢合わせし、彼を救出。そのまま2人は車での旅を共にし、過去の恋愛や心の傷を語り合うことになります。やがて別れた2人ですが、録音技師と女性主人公が、台湾最南端の海岸で出会うという場面へとつながっていきます。そしてラストでは、精神科医がウェットスーツを着て全力疾走するという、不思議ながらも象徴的なシーンで物語はおしまい。

 台湾南部の南国らしい空気感、台南などの街の風景、そして道中で出会う人々が放つ素朴なエネルギーなど、ビジュアル的には印象的なシーンが多くありました。加えて、役者陣の演技力も見どころで、それぞれのキャラクターが抱える“心の痛み”や“空虚さ”を、台詞以上に表情や間合いで表現していた点は見応えがあったと感じました。

 ただ、正直なところ作品全体としては、ドラマティックな起伏が少なく、淡々とした展開が続くため、観ていて退屈に感じてしまう部分が多くございました。3人の登場人物がすれ違ったり交錯したりする描写も、唐突な感情の変化が多く、観客側がその変化についていくのが難しく、感情移入しづらい構成だった印象です。

 個人的には、作中に登場したビンロウ売りの女性のセクシーな姿だけが強く印象に残ってしまい、それ以外の心の変遷や登場人物の背景に深く入り込むことが難しかったというのが正直な感想です。

☆☆

鑑賞日:2024/10/20 DVD

監督リン・チンチェ 
脚本リン・チンチェ 
出演グイ・ルンメイ 
モー・ズーイー 
ジア・シャオグオ 
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