●こんなお話
大正時代の学校で教育方針で先生同士が揉めたりしつつ登山修学旅行で暴風雨に遭って遭難してしまう話。
●感想
物語の舞台は大正時代の中学校。規定の教科書にとらわれない、自由で人間性を重んじた教育を実践する教師たちが登場する。校長はそんな教育方針を支え、見守る立場。教師のひとりには使用人との身分違いの恋があり、家族の反対や騒動に巻き込まれながらも、校長が仲裁役を果たしていく。教育方針を巡って、白樺派的な自由教育と鍛錬主義の対立も描かれ、学校への視察に来た関係者たちがその教育を問題視する展開もある。
そんな中、校長の発案で登山を目的とした修学旅行が企画される。安全性を理由に一部の教師は反対するが、最終的には実施へ。鈴を鳴らしながら登る生徒たちの姿に、自然と教育の融合という理想が感じられるが、道中ですれ違った3人の青年が後の不穏な出来事につながっていく。
山小屋に到着すると、そこはすでに焼け落ちており、青年たちが放火したと怒る生徒たち。それでも校長は冷静に対応し、即席で避難小屋を作るものの、悪天候と寒さにより生徒のひとりが命を落としてしまう。これを機に、生徒たちは小屋を飛び出し、教師たちも後を追う形で山中を進む。救助を呼びに行った教師、凍えながらも生徒を励まし続ける校長、極限状態で幻覚を見るしんがりの教師…。最後は救助隊によって命をつなぎ止める者もいれば、命尽きる者も。
事故後、生存した教師や校長の妻は、遺族から非難を受ける。だが、それでも教師のひとりが校長の行動と思いを後世に伝えようと記念碑建立運動を始め、最終的にその願いが叶い、今もなお登山は受け継がれているというラストに繋がっていく。
作品全体として、白樺派の理想と、それを現実にぶつけたときの難しさが丁寧に描かれていました。教師と使用人の恋愛や教育方針の対立、そして大きな遭難事故へと繋がる流れは重層的でありながらも、前半の日常描写がやや長く、盛り上がりに欠ける印象もありました。
登山開始後も、突然現れる青年たちのネガティブな言動や暴走には入り込めず、物語のテンポが乱れる部分も。けれども、校長が命をかけて生徒たちを守ろうとする姿勢は心を打つもので、子どもたちの死が重くのしかかる展開には感情が揺さぶられました。
また、低体温症の表現として、登場人物たちの顔にほどこされたメイクが幽霊のようで、真面目なシーンなのに思わず笑いそうになるほど強烈でした。
☆☆☆
鑑賞日:2024/03/24 WOWOW
監督 | 森谷司郎 |
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協力監督 | 大森健次郎 |
脚本 | 山内久 |
原作 | 新田次郎 |
出演 | 鶴田浩二 |
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岩下志麻 | |
三浦友和 | |
田中健 | |
中井貴恵 | |
大竹しのぶ | |
北大路欣也 | |
地井武男 | |
笠智衆 | |
北村和夫 | |
佐藤慶 | |
大滝秀治 | |
神山繁 | |
鈴木瑞穂 | |
下川辰平 | |
下元勉 | |
南風洋子 | |
米倉斉加年 | |
山谷初男 | |
初井言栄 | |
丹波哲郎 |