映画【コードネームは孫中山】感想(ネタバレ):台北の貧困高校生たちが挑む銅像強奪作戦

Meeting Dr. Sun
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●こんなお話

 学校の銅像を盗んで金もうけをしようとする学生さんたちの話。

●感想

 台湾・台北。高校へ通う男子生徒レフティは、学費を滞納し続けていた。クラス委員からは毎日のように支払いを催促され、教師からも呼び出されるが、家には金がない。

 ある日、レフティは学校の倉庫に巨大な孫文、つまり“孫中山”の銅像が放置されていることを知る。かつては学校の象徴として扱われていた銅像だったが、時代の変化によって誰にも見向きされなくなっていた。レフティは銅像を見上げながら、「これを売れば金になる」と考え始める。

 レフティは仲間たちへ盗難計画を持ち掛ける。彼らもまた貧困家庭で暮らしており、学費や生活費に苦しんでいた。誰も将来に希望を持てず、毎日をやり過ごすだけの生活を送っている。そこで彼らは、学校の倉庫から巨大な銅像を盗み出し、業者へ売却して現金化する作戦を立て始める。

 まずは必要な道具を揃えるため、少年たちは安物のマスクを購入し、重量に耐えられそうな台車を探し回る。さらに、夜間警備員の注意を逸らすため、警備員が好きそうな本を用意したり、倉庫の鍵を管理している女性職員へ近づくために、イケメンを装って会話を仕掛けたりと、稚拙ながらも必死に準備を進めていく。

 しかし計画の途中、レフティたちは一冊のノートを拾う。そこには自分たちが考えていたものとほとんど同じ“孫中山銅像盗難計画”が細かく書き込まれていた。つまり、自分たち以外にも銅像を狙っている人間がいるということだった。

 調べを進めた末、そのノートを持っていたのが同じ学校の少年・小天だと判明する。小天もまた極貧生活を送っており、狭いアパートで家族と暮らしていた。生活はレフティ以上に苦しく、彼もまた銅像を盗み出して金に換えようとしていたのである。

 レフティは小天へ協力を持ち掛けて、自分達のアジトを紹介する。ところが、レフティたちが準備していた道具を持ち逃げしてしまう。仲間たちは呆れ、計画そのものを諦めかける。しかしレフティだけは諦めず、「小天が盗み出したところを横取りする」という新たな作戦へ切り替える。

 そして決行の夜。少年たちは学校へ忍び込み、ロープや台車を使って巨大な孫中山像を運び出そうとする。しかし銅像は想像以上に重く、まともに動かすだけでも一苦労だった。さらに警備員に見つかりそうになり、とっさに安物マスクを被ってゾンビのふりをするなど、場当たり的な行動で危機を乗り越えていく。

 やがて彼らはトラックを盗み、なんとか銅像を積み込んで学校から運び出す。しかし移動中、固定が甘かった銅像が道路の真ん中へ落下。騒然となる現場で、レフティと小天は、取っ組み合いの殴り合いへ発展する。二人は延々と殴り合いを続ける。

 最終的に少年たちは警察へ捕まり、学校では教師から反省文を書かされることになる。大金を得るという計画は失敗に終わり、彼らの生活そのものが大きく変わるわけではなく。ラストでは、運び出された孫中山像を背景に、少年たちが歩道橋の上から街を見下ろしている。彼らがまた何か新しい計画を企んでいることを感じさせながらおしまい。


 貧困から抜け出せない少年たちを描きながらも、全体のタッチはかなり軽快で、青春コメディとして楽しく鑑賞できる作品でした。高校生たちが巨大な銅像を盗もうとするだけの話なのに、そこへ社会問題や台湾の歴史背景が自然と混ざり込んでいるのが面白かったです。

 特に印象的だったのは、計画そのものの雑さでした。安物のマスクを被ってゾンビのふりをしたり、警備員対策が適当だったり、イケメン作戦で鍵を狙ったりと、どこか抜けている高校生らしさが全編に漂っています。犯罪を企てているのに、やっていることはどこまでも子供っぽく、そのアンバランスさが独特の味になっていました。

 物語の筋自体は本当に「銅像を盗む」という一点に集中しています。しかし巨大な孫中山像を運び出すというだけで、ここまで一本の映画として成立させているのが面白く、ロードムービーのような空気もありました。台北の夜景や裏路地、学校周辺の雑多な景色も印象に残ります。

 レフティと小天の関係も良かったです。最初は互いを利用しようとしていた二人が、殴り合いながらもどこか似た者同士として繋がっていく流れには青春映画らしい熱量がありました。特に終盤の長回しの殴り合いは印象的で、感情を言葉にできない少年たちが拳だけでぶつかっている空気がありました。

 一方で、主人公二人以外の仲間たちは人数が多い割に個性が薄く、顔と名前がかなり把握しづらかったです。誰がどの役割なのか途中で混乱する部分もありました。ただ、その雑多な感じも含めて“台北のどこにでもいる貧乏高校生たち”というリアリティに繋がっていたようにも感じました。

 社会派の題材を扱いながらも重苦しくなり過ぎず、青春映画として軽妙に見せ切っている作品でした。巨大な銅像を必死に運ぶ少年たちの姿が、どこか可笑しく、同時に切実でもある不思議な映画でした。

☆☆☆

鑑賞日:2026/05/20 DVD

監督イー・ツーイェン
出演ジャン・ホァイユン
ウェイ・ハンディン
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