●こんなお話
マサルとシンジが10年後に再会して、これまたそれぞれが試練にぶつかっていく話。
●感想
前作でボクシングもヤクザもやめたはずの主人公たちが、校庭で「マアちゃん、俺たちもう終わったのかな」「バカ野郎!まだ始まってもいねえよ」と語り合うシーンがありましたが、それがなかったことになっているように感じられました。
物語はマサルが刑務所から出所する場面から始まる。時代はすでにヤクザの時代ではなく、彼らも食べていくのに苦労している様子。一方、シンジはボクシングを続けているが、常に格上の相手に挑み負け続ける“咬ませ犬”役で、警備員のアルバイトもしている。前半はマサルとシンジ、それぞれの現在の姿を交互に描いていきます。
シネスコサイズの横長画面にシンメトリーな構図が映え、中央を人物が歩いたり自転車で走るカットは視覚的にとてもかっこよく、メインテーマも素晴らしかったです。テーマ曲が流れるシーンは特に盛り上がります。ボクシングシーンも迫力があり、役者たちの努力が伝わってきて良かったです。
しかしながら、話の展開は単調で、タイトルに【キッズリターン】と冠している意味や、別の監督・キャストで作った必然性が見えてこなかったです。脇役たちはみな凶暴的で、シンジの同僚警備員は口癖のように「バカ野郎」をつけてやる気なく絡んでくる。この絡みの描写が長くじっと映されるため、笑うべきなのか戸惑いながら見てました。マサルの子分も恋人にきつく当たり続けていて、なぜ付き合っているのか理解しづらかったです。彼は常に「何だこら!」と怒鳴り続け、なぜこれまでの人生で大きなトラブルに巻き込まれなかったのか不思議に感じるほどイライラした人物でした。
マサルは厳しいヤクザ業界でビリヤード店から金を巻き上げたり、かつての仲間に挨拶したりする。このかつての仲間が敵対する相手となり、主人公たちを苦しめるが、抗争の理由や利害関係がよくわからず、小さな組の襲撃に対して復讐に燃えるマサルを見ても感情移入しにくく。むしろ「この人たちはなぜ争っているのだろう?」と疑問が残りました。
シンジはマサルと再会し、再びボクシングに挑戦する決意を固めて練習を始める。ボクシングで勝ち上がっていくモンタージュは、メインテーマの盛り上がりとともに高まる演出でしたが、目の調子がおかしくなっていく伏線も描かれます。
シンジにはおしゃれなカフェを経営する恋人のような存在がいるが、彼女のキャラクター描写が浅く、ボクシングの試合を見ないこだわりがあると説明される一方で、終盤にチケットをもらうシーンがあっても特に深い意味が感じられなかったです。マサルの子分もなぜ狙われているのか不明で、恋人に罵声を浴びせると思えば急に大事にして守ろうとするなど、全員の人物描写が中途半端に感じられたり。
青春ものとしての爽快感はなく、人生の厳しさや苦悩も伝わりにくく、何を見ればいいのか迷ってしまう作品でした。
☆☆
鑑賞日: 2013/10/11 テアトル新宿
監督 | 清水浩 |
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脚本 | 益子昌一 |
清水浩 | |
原案 | ビートたけし |
出演 | 平岡祐太 |
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三浦貴大 | |
倉科カナ | |
中尾明慶 | |
市川しんぺー | |
小倉久寛 | |
池内博之 | |
杉本哲太 | |
ベンガル |