映画【追龍】感想(ネタバレ):セピアの香港、喧嘩と友情が交差するアクションドラマ

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●こんなお話

 1960年の香港で黒社会で成り上がる男と彼を世話する警官が麻薬ビジネスとか英国人と対立する話。

●感想

 画面の色がまず印象に残るもので、冒頭から全編にかけて、セピアがかったような茶色や青のトーンが強く出ていて、なんとも独特な空気をつくりあげていると思います。舞台となる1960年代の香港の街並みもまた、画面に映るたびに情報量がすごくて、屋台や看板、衣装や建物の色づかいも見ごたえがありました。

 そこに重ねるように、犯罪者たちの友情と裏切りの物語が進んでいく。主人公は中国本土から海を渡ってきた男。ドニー・イェンが演じていて、真面目に働くより喧嘩したほうが儲かる、というシンプルな発想から、仲間たちと一緒に大規模な乱闘に加わる。その一件をきっかけに、アンディ・ラウ演じる警官と出会う。立場は違えど互いに利用価値を見いだして、次第に協力し合うような関係へと変わっていく。

 やがて香港人同士の対立や、警察と裏社会の癒着などが描かれ、アンディ・ラウもまた裏の世界と手を組むことで地位を上げていく。舞台のひとつとなる九龍城砦のシーンはとても見応えがあり、あの狭く入り組んだ路地を利用した追いかけっこは、映像的にも非常に魅力的でした。あの美術セットの密度と説得力には、ただただ圧倒されます。

 主人公の勢力は拡大していくが、本土から呼び寄せた奥さんが移動の途中で事件に巻き込まれたり、仲間が次々と倒れていったりと、物語は予想外の方向に転がっていく。とはいえ、奥さんの登場がやや唐突で、最初は回想で殴られるシーンから現れ、次に出てきたときには移民のような状態で登場していて、観ていて混乱してしまう部分もあったり。

 さらに、後半になって出てくる二重スパイの女性。彼女はかつて主人公が育てていたという設定らしいですが、その説明も急すぎて飲み込むのに時間がかかりました。女性キャラクターたちの描写がもう少し丁寧にされていたら、物語により深みが加わったようにも思いました。

 一方で、タイでの麻薬交渉の場面はとてもスリリングで、どこで裏切りが起きてもおかしくないような空気に満ちていて、緊張感が高まっていたのが印象的です。

 そして後半、怒りをためた香港人たちが、抑圧的な英国人に立ち向かっていく流れも胸が熱くなる展開でした。急に悪役たちが集まってきた感はあるのですが、それを一人ずつ倒していく爽快感もちゃんとあって、アクション映画としての気持ちよさが詰まっていたと思います。ただし、単純な勧善懲悪では終わらせずに、復讐の虚しさのようなものも残しているところが、この作品の余韻を豊かにしていたと感じました。

 上映時間は2時間を少し超えていましたが、長く感じるというほどではなく、アクションや舞台の魅力で引っ張ってくれる作品でした。何より、ドニー・イェンのキレのある喧嘩シーンと、アンディ・ラウのビシッとしたスーツ姿が、終始かっこよくて、これを観るだけでも満足できる一本だったと思います。

☆☆☆

鑑賞日:2020/11/21 DVD

監督バリー・ウォン 
ジェイソン・クワン 
脚本バリー・ウォン 
出演ドニー・イェン 
アンディ・ラウ 
フィリップ・キョン 
ケント・チェン 
ユー・カン 
フェリックス・ウォン 
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