映画【ウィンズ・オブ・ゴッド】感想(ネタバレ)

Winds of God (1995)
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●こんなお話

 漫才師のコンビが交通事故きっかけで終戦間際にタイムスリップして、しかも特攻隊員になっていて、現代の感覚と戦時中の感覚でぶつかり合いながら理解していく話。

●感想

 現代に生きる青年が、ある日突然、戦時中の日本にタイムスリップしてしまうという設定から始まる本作。物語は、特攻隊という厳しい現実を生きる若者たちと主人公との交流を軸に展開していきます。死ぬことがほぼ確定している未来を前に、それでも笑顔で仲間と日々を過ごし、家族への手紙を書き、命の使い方を考え続ける青年たちの姿が描かれていて、戦争映画でありながら青春群像劇のような側面も感じられる作品でした。

 現代からやってきた青年が、最初は「なんでそんなことをするんだ」と戦時中の感覚に戸惑いながらも、少しずつ彼らの心の奥にあるものに触れていき、次第に自分の立ち位置を見つけていく様子は、観る側にも「自分だったら」と問いかけてくるようで、どこか引き込まれる部分がありました。

 ただ、全体を通してみると、限られた制作環境による部分もあるのかもしれませんが、いくつか気になるところがありました。たとえば、飛行機の描写でカットによって色味が変わってしまったり、戦闘機のディテールや動きに違和感があったりして、そこが物語への没入を少し妨げていたように思います。特に航空機の離陸や飛行シーンはクライマックスでの重要な場面なだけに、もう少し丁寧な映像づくりがされていたらさらに良かったかもしれません。

 冒頭の舞台劇のような演出も独特ではありましたが、現実と演出の境界線が曖昧になってしまい、やや世界観に入りづらく感じる部分もありました。それでも物語の根幹にはしっかりと「命とは何か」「戦争とは何か」というテーマがあり、それが主人公の視点を通して描かれていたのは魅力の一つだったと思います。

 主人公は平和の大切さを現代の視点から訴えるのですが、その主張がやや表面的に見える場面もあったかもしれません。戦時中の人々と出会い、過ごしていく中で少しずつ考え方が揺らいでいき、最終的に特攻という現実をどう受け止めるのか、という心理の流れにもう少し丁寧な描写があれば、より深く感情移入できたように感じました。

 とはいえ、現代人が過去にタイムスリップするという設定を通じて、戦争の時代に生きた若者たちがどのような思いで生きていたのかに触れることができるという構成は興味深く、過去と現在の価値観が交差する物語として一定の見ごたえがあったと思います。

☆☆☆

鑑賞日: 2015/06/04 Hulu

監督奈良橋陽子 
脚色今井雅之 
原作今井雅之 
出演今井雅之 
山口粧太 
菊池孝典 
六平直政 
井田州彦 
新井つねひろ 
大森嘉之 
志村東吾 
別所哲也
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