●こんなお話
飛行機の中で1人の人間が変死して機内の人たちが大変なことになっていく話。
●感想
機内の照明は終始ほの暗く、開幕からどこか異様な雰囲気が漂っている。ホラー映画のような不穏さに満ちた空気が全体を包み、観る者に嫌でも不安を抱かせるが、あまりにも画面が暗いため、何が起きているのかよく見えない瞬間も少なくなかったです。影の中から何かが現れたような気もするし、ただの機材の陰なのかもしれない。そうした曖昧さが不気味さを演出していたとも言えるが、画面構成としてはやや厳しさも感じられました。
物語は、ある夜の旅客機内。1人の乗客が不自然な死を遂げたことから、機内に不穏な空気が広がっていく。乗客たちはそれぞれが事情を抱えており、誰もが心を閉ざしたままこの異常事態に向き合うことになる。死者が出たにもかかわらず、キャビンアテンダントが昔の初恋を語ってみたり、不倫に悩んでいたりと、やや現実感に欠ける反応を見せる一方で、機内では不可解な出来事が次々と起こり、観る側も登場人物たちと同様に、不安と混乱の中に取り残されていく。
中心人物の女性は、登場から座席に落ち着くまで、ずっと不満を口にし続けていて、他人への配慮を欠いた発言も目立つ人物。序盤からかなり癖のある描写がなされており、後半でこの性格が物語のカギになるのかと期待させられるが、特に変化もなく終盤を迎える。心の変化も成長もなく、終始同じトーンで進んでいくため、観客として感情を寄せていく余地があまりなかったのが正直なところです。
機内では、意味深なアナウンスや、よく見ると異変のようなものが映り込んでいたり、緊張を煽る音楽が流れるのだが、それらが何を示しているのかについての説明は一切ないまま、約80分間が過ぎていく。超常的な恐怖の演出があるかと思えば、心理的な不安を煽るような描写も交じっていて、観る者を惑わせる構成。ただ、それが物語の核心に結びついていないため、終盤に向かうにつれて「これは一体何を観せられているのだろう」と感じてしまう時間が長くなっていたように思います。
さらに、ラストに明かされる“ある事実”も、唐突な印象を受けた上に、それが本編の流れにどう作用していたのかがはっきりせず、どこか投げっぱなしのような印象が残りました。せっかくの不穏な空気や演出が積み重なっていたにもかかわらず、それが一つのまとまりとして昇華されていないため、余韻というよりも戸惑いが先に立つラストでした。
とはいえ、暗がりを舞台にした演出の中には、光と影のコントラストを活かしたカットや、音響効果によって生み出された緊迫感もあり、ジャンル映画としての空気作りには確かなものを感じました。謎に満ちた機内で、人間たちが何を考え、どんな選択をするかをじっと見つめるような目線には一定の魅力もあると思いました。
☆
鑑賞日: 2015/08/24 Blu-ray
監督 | 清水崇 |
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脚本 | クレイグ・ローゼンバーグ |
出演 | ジェイミー・チャン |
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レスリー・ビブ | |
ジェリー・フェラーラ | |
ニッキー・ウィーラン | |
ライアン・クワンテン | |
エイミー・スマート | |
ジョナサン・シェック |