映画【Z Inc. ゼット・インク】感想(ネタバレ):暴力が合法化した会社の復讐劇

MAYHEM
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●こんなお話

 人間の欲望を抑えられないウィルスが広まった会社で自分の不当解雇を取り消させるために頑張る話。

●感想

 世界では「ID-7(通称レッドアイ)ウイルス」と呼ばれる感染症が流行していた。このウイルスに感染すると理性や自制心が失われ、怒りや欲望といった衝動を抑えられなくなる。一方で感染者は責任能力がないと判断されるため、感染中に起こした犯罪は刑事責任を問われないという異常な法律が存在していた。

 主人公デレク・チョーは、大手法律コンサルティング会社「タワーズ&スマイス」で将来を期待される若手弁護士だった。しかし出世競争の中で理想を失い、会社の利益を優先する仕事を続ける毎日を送っていた。

 ある日、住宅ローン返済期限の延長を求めてメラニー・クロスが会社を訪れる。しかしデレクは会社の規則を理由に十分な対応ができず、彼女は追い返されてしまう。

 その直後、巨大企業ヴァンダコープが関係する裁判の失敗を上司カーラがデレクへ押し付け、自らは手柄だけを得るよう工作していた事実が明らかになる。デレクは社長ジョン・タワーズへ潔白を訴えるものの聞き入れられず、すべての責任を負わされたまま即日解雇され、弁護士資格まで失う危機に陥る。

 私物を持って会社を出ようとした瞬間、ビル内でID-7ウイルスの感染者が確認される。疾病管理当局は建物全体を八時間完全封鎖し、中和剤が効果を発揮するまで誰一人として外へ出られなくなった。

 感染したデレクは、自分の行動が法的責任を問われない状況になったことを悟り、警備員を倒して社長のもとへ向かおうとする。しかし地下へ送られ、社長直属の用心棒ブルに返り討ちにされてしまう。その混乱の中、唯一自分を信じてくれていた同僚ユアンがブルによって命を落とし、デレクは会社への復讐を決意する。

 地下にはメラニーも拘束されていた。彼女も感染しており、住宅を奪おうとした会社幹部へ怒りを募らせていたことから、二人は協力して最上階を目指すことになる。

 まずデレクはヴァンダコープへ連絡を取り、自分が裁判の失敗の責任者ではない証拠を確保し、弁護士資格喪失を回避する。その後は社内で武器を集めながら上階へ進み、感染によって暴徒化した社員たちが暴力を繰り広げる混乱のオフィスを突破していく。

 二人は解雇通知を担当する人事責任者リーパーのフロアへ到着する。激しい戦闘の末、リーパーは上階へ進むカードキーを差し出すが、最後まで抵抗を続けたため、メラニーによって電動ノコギリで返り討ちにされる。

 続いてカーラのフロアへ向かうと、カーラは社員たちを利用して二人を止めようとする。しかし長年カーラからパワーハラスメントを受けていた秘書メグが反旗を翻し、昇進話を利用しながらカードキーを電子レンジで破壊したうえで、カーラをハサミで刺して殺害する。

 カードキーを失ったデレクたちはIT担当社員の協力を受け、共同経営者アイリーン・スマイスを下層階へ呼び出すことに成功する。スマイスはカードキーと引き換えにメラニーを差し出すよう要求し、デレクは一度は従ったように見せかける。しかし椅子の固定ボルトをあらかじめ緩めていたため、メラニーは拘束を解いて反撃し、そのままスマイスを殺害する。

 最上階では社長ジョン・タワーズが感染しているにもかかわらず冷静さを保ち、デレクへ共同経営者の地位を与える代わりに味方になるよう持ち掛ける。かつてのデレクなら受け入れていたかもしれない提案だったが、彼は腐敗した会社そのものを終わらせる道を選ぶ。

 二人は激しい殴り合いとなり、最後はデレクがジョンをガラスの手すりから突き落とす。ジョンはビル最上階から転落して命を落とし、その直後に隔離時間が終了。中和剤が効き始め、建物はようやく解放される。

 事件後、デレクは一時的に共同経営者としての権限を引き継ぎ、その権限を利用してメラニーの住宅ローン返済期限延長を正式に承認する。そして会社を辞職し、企業社会と決別する道を選ぶ。その後はメラニーとともに画家として新たな人生を歩み始めておしまい。


 スティーブン・ユアン目当てで鑑賞しましたが、期待どおり存在感のある演技を楽しめました。普段の知的で穏やかな印象から一転し、怒りを爆発させながら暴れ回る姿は非常に印象的でした。

 暴力が法的に許容される世界という設定は非常にユニークで、企業社会へのブラックな風刺もうまく盛り込まれています。会社という閉鎖空間を舞台にした復讐劇としてもテンポが良く、アイデアの面白さが光る作品でした。

 一方で、序盤は社内の人間関係や会社の仕組み、登場人物の立場を説明する場面が多く、約90分という上映時間を考えると少し長く感じました。物語が本格的に動き始めるまでに時間がかかる印象があります。

 また、アクションは基本的に殴り合いが中心で、終盤まで似たような戦いが続くため、少し単調に感じる部分もありました。もう少し戦い方や演出に変化があれば、最後までさらに引き込まれたと思います。

 それでも、企業社会への皮肉とブラックコメディ、スティーブン・ユアンとサマラ・ウィーヴィングの掛け合いが魅力的で、気軽に楽しめるバイオレンスアクションとして満足度の高い一本でした。

☆☆

鑑賞日:2026/07/20 U-NEXT

監督ジョー・リンチ 
脚本マティアス・カルーソ 
出演スティーヴン・ユァン 
サマラ・ウィーヴィング 
スティーヴン・ブランド 
ダラス・ロバーツ 
キャロライン・チケジー 
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