●こんなお話
AI裁判官に追い込まれた容疑者が、無罪を証明すべく奮闘する話。
●感想
犯罪件数の急増により、従来の裁判制度が機能不全に陥った近未来、司法の効率化と公平性を目的として、AIがすべての判断を下す「マーシー裁判所」という新たな司法システムが導入される。この世界では、人間の裁判官は排除され、被告人はAIによる統計とアルゴリズムによって有罪か無罪かを瞬時に算出される仕組みとなっていた。
刑事クリス・レイヴンは、ある朝目を覚ますと拘束された状態で、巨大なホログラムとして現れるAI裁判官マドックスの前に立たされていることに気づく。彼は最愛の妻ニコールを殺害した容疑者として裁かれる立場に置かれており、事件当夜の記憶は曖昧で、断片的な映像しか思い出せない。マーシー裁判では、被告に与えられる猶予はわずか90分。その間にAIが算出する有罪率を規定値以下まで下げなければ、即座に処刑が執行される。
裁判開始時点でレイヴンの有罪率は極めて高く、彼は時間に追われながら自らの無実を証明するため、監視カメラの映像、通信履歴、SNSの記録など、膨大なデジタル情報を必死に洗い出していく。調査を進める過程で、妻ニコールが同僚たちや別の男性と接触していた可能性や、自分自身が過去に同僚を失った事件をきっかけにアルコールに溺れていた事実、夫婦関係が悪化していた現実、さらに娘が親の知らないSNSアカウントを持っていたことなど、目を背けてきた私生活の問題と向き合わされる。
妻殺害当夜の行動記録や周囲の証言は次第にレイヴンを追い詰めるが、彼は感情に流されることなく、AI裁判官マドックスに対して論理的に疑問を投げかけ続ける。やがて、事件の背後には、かつてレイヴン自身が逮捕しAI裁判にかけた人物と深い関係を持つ第三者の存在があることが判明する。さらに、その人物が大規模なテロを計画している事実が明らかになり、レイヴンはマドックスと協力しながら、迫り来る危機に立ち向かっていくという。
とにかく情報量が多く、正直なところ一度の鑑賞では展開を完全に把握するのが大変で、かなり集中力を要求される作品だと感じました。映像、セリフ、画面内に表示されるデータや数値が休む間もなく押し寄せてくるため、観ていて疲労感はありますが、その分、二回目は吹替などで細部を確認しながら観たくなるタイプの映画だと思います。
物語のテンポは非常に速く、次から次へと状況が変化していくため、退屈する時間はほとんどありません。監視社会や情報化社会を強く意識した映像演出や、画面分割、ホログラム表示などのギミックは見ていて楽しく、ティムール・ベクマンベトフ監督らしい映像表現が存分に発揮されています。
中でも印象に残ったのは、爆弾を積んだ暴走トラックを止められないパトカーとのチェイスシーンで、スピード感と緊張感が非常に高く、思わず画面に引き込まれました。アクションだけでなく、AIによる裁きの是非や、人間の感情や曖昧さが数値化されることへの違和感も描かれており、単なるSFサスペンスに留まらないテーマ性も感じられます。情報過多ではありますが、その混沌とした感覚自体が、作品世界と強く結びついている点が印象的な一本でした。
☆☆☆
鑑賞日:2026/01/25 イオンシネマ座間
| 監督 | ティムール・ベクマンベトフ |
|---|---|
| 脚本 | マルコ・ヴァン・ベル |
| 出演 | クリス・プラット |
|---|---|
| レベッカ・ファーガソン | |
| アナベル・ウォーリス | |
| カーリー・レイス | |
| クリス・サリヴァン | |
| カイリー・ロジャーズ | |
| ジェフ・ピエール | |
| ラフィ・ガヴロン | |
| ジェイミー・マクブライド | |
| ケネス・チョイ |

