●こんなお話
中学時代からの知り合いが教師になって好きという感情に悩んで向き合う話。
●感想
離島で中学生として過ごす主人公は、隣の席の高木さんに毎日のようにからかわれながらも、どこか日常に彩りを感じながら学校生活を送っていた。しかし、ある日突然、高木さんが海外へ引っ越すこととなり、彼女の不在がぽっかりと心に穴をあけることになる。
それから10年の時が経ち、主人公は母校の中学校に体育教師として赴任。生徒との関わりに試行錯誤しながらも、懸命に働いていた。そんな彼の前に、教育実習生としてかつての高木さんが現れる。周囲の人たちはすでにそのことを知っており、主人公だけが驚かされるかたちになる。ふたりは再会後、一緒に帰ったり。
同窓会を通じて、かつての同級生たちが結婚したり、別れていたりという青春時代の延長線にある大人たちの姿が浮かび上がる。そんな中で主人公は、不登校の生徒に必要な書類を届ける場面もあり、「無理して学校に来なくてもいい」という彼の考え方に、高木さんは感心する様子を見せる。
見回り中には、生徒同士が買い食いしていたり、キスしていたりといった出来事に遭遇するなど、学校という場の多様な日常も描かれていく。高木さんは、不登校の生徒が絵を描くのが好きだということを知り、一緒に絵を描く中でその子の気持ちに寄り添い、学校へ戻るきっかけを作っていく。
その一方で、絵画部の女子生徒が「自分のせいで彼が来られなくなった」と主人公に打ち明ける場面もあり、2人のすれ違いや誤解があったことが明らかになる。登場人物たちの心の動きが、静かな会話を通して丁寧に描かれていた印象です。
そして教育実習の最終日、放課後の教室でふたりきりになった主人公と高木さんは、静かに想いを伝え合い、お互いにプロポーズをして交際を始めることに。実習を終えた高木さんは生徒たちから感謝の言葉を受け取り、中学時代の思い出が走馬灯のように流れていく映像演出を経て、ふたりの結婚式の様子が描かれて物語は終わりを迎える。
海と空の青さ、遠くに見える山々の輪郭など、離島の風景が美しく撮られていて、物語を見守るうえでも心地よい背景でした。まるで旅をしているような気分になれる、そんな映像の力があったと思います。
ただ、物語としては高木さんがいきなり掃除ロッカーから飛び出してきたり、サプライズをしたり。主人公の気持ちをかき乱すようなキャラクター描写が多く、個人的にはあまり共感を持ちづらい展開に感じてしまいました。告白するかしないかという駆け引きがメインではありますが、それが自身の経験と重ならなかったせいか、物語の行方に気持ちがついていけなかった印象です。
また、不登校の生徒と絵画部の女子生徒が廊下で語り合ったり、主人公たちが教室で長く想いを伝え合うシーンもありましたが、そうした展開が少し長く感じられました。青春のまっすぐさを描こうとする意図は感じましたが、自分にはあまり刺さらず、全体としてはやや長く感じる120分でした。
☆☆
鑑賞日:2025/07/12 Amazonプライム・ビデオ
監督 | 今泉力哉 |
---|---|
脚本 | 金沢知樹 |
萩森淳 | |
今泉力哉 | |
原作 | 山本崇一朗 |
出演 | 永野芽郁 |
---|---|
高橋文哉 | |
鈴木仁 | |
平祐奈 | |
前田旺志郎 | |
志田彩良 | |
白鳥玉季 | |
齋藤潤 | |
江口洋介 |