●こんなお話
ワカンダに眠るエネルギーをアメリカとかフランスが狙ったり水中に住む民族が地上を狙ったりとする中、王政維持が大変なワカンダの話。
●感想
前作の主人公が病床に伏し、妹が必死で治療を試みるものの、その願いは届かず静かに旅立っていく場面から物語は始まる。偉大な王を失ったワカンダは国葬を執り行い、世界に対してその喪失を発信する。国連の場では、アメリカやフランスといった列強が、ワカンダが独占するエネルギー資源の利用を求めるが、新たに国王となった母が毅然とした態度で応じる。一方その裏では、ワカンダの研究施設が傭兵部隊の襲撃を受け、勇敢な戦士たちが迎え撃っていた。
そのエネルギーを探査する装置を用いて、海底にある資源を採掘しようとした他国の調査隊は、突如現れた青い肌の海中民族に襲われ命を落とす。装置の存在が知れ渡り、ワカンダの王はそれを開発した若き天才科学者を保護するよう命じ、部下たちがアメリカへ向かう。だがFBIの追跡を受け、さらに海中からの勢力の襲来も重なり、逃走劇の中で科学者と主人公は拉致されてしまう。責任を問われた部下は任を解かれる。
囚われの身となった主人公は、海底に築かれた王国とその支配者に出会う。かつて16世紀、スペイン人の侵略を受けたことで生まれたこの民族は、長年地上の人々への不信を抱えていた。王はワカンダに同盟を提案し、共に地上を攻めようと持ちかけるが、主人公はその申し出を断る。ワカンダの女王は密かにスパイを海底に送り込み、驚くほど容易に潜入して主人公らのもとへと到達し、彼らを脱出させる。
その行動に激怒した海底王国の軍勢は、ついにワカンダへ攻撃を仕掛ける。市民たちや女王までもが戦火に晒される中、窮地に立たされた主人公たちだったが、海底王は突如として「1週間後に再び攻撃する」と通告し、猶予を与えて引き上げていく。
ワカンダでは海底王国の弱点を分析し、新たな兵器の開発に着手。来る決戦に備えた戦闘準備が始まる。クライマックスでは、大きな船やヘリに乗ったワカンダの戦士たちが、海の民族との戦いに臨む。序盤は互角の攻防を見せるものの、しだいに劣勢に追い込まれていく。主人公は海の王との一騎打ちへ挑み、水分を失うと弱体化するという特性を突いて勝利を得る。王は降伏を宣言し、両陣営は和解に至る。
戦後、科学者は平穏な学園生活へと戻り、主人公は海岸で静かに涙を流す。そこで明かされる、亡き兄には実は子どもがいたという事実。少年は自分の使命を自覚しており、物語は次なる世代へと引き継がれていく。
全体として重厚なテーマを扱いながら、2度にわたる葬送の場面では、登場人物たちの喪失感と向き合う姿が丁寧に描かれていたように感じました。しかしながら、160分という尺の長さをかなり感じる構成ではございました。特に序盤から中盤にかけて、登場人物の感情をセリフで細かく説明する場面が多く、その分テンポがゆっくりに思えてしまいました。
アクションについても、夜間の場面が多いため視認性が低く、誰がどこで何をしているのか把握しづらかった部分がありました。戦闘の迫力そのものは伝わってくるのですが、勢いや痛快さに欠けていた印象も否めませんでした。
また、シリーズを通しての登場人物に関する前提知識がないと、誰が誰だったか記憶を辿りながらの鑑賞となってしまい、戦闘が複雑になると混乱する瞬間もありました。海底王国の人々が抱く地上への憎しみの描写も、終盤であっさりとした形で整理されていく展開にやや違和感を覚えました。
主人公が度々夢の中で過去の登場人物と対話を重ねたり、亡き人たちの思いを受け取ったりする場面も印象的ではありましたが、全体的には泣きながら葛藤を語る場面が続き、重たい雰囲気が継続する作品となっていたと感じます。それでも、世代を越えて引き継がれる意思や、人と人との理解の可能性を描こうとする姿勢には心を打たれました。
☆☆
鑑賞日:2022/11/13 川崎チネチッタ
監督 | ライアン・クーグラー |
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脚本 | ライアン・クーグラー |
ジョー・ロバート・コール | |
製作 | ケヴィン・ファイギ |
出演 | レティーシャ・ライト |
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ルピタ・ニョンゴ | |
ダナイ・グリラ | |
ウィンストン・デューク | |
フローレンス・カサンバ | |
ドミニク・ソーン | |
ミカエラ・コール | |
テノッチ・ウエルタ | |
マーティン・フリーマン | |
アンジェラ・バセット |