映画【上意討ち 拝領妻始末】感想(ネタバレ):武士道の理不尽と家族愛が炸裂する!壮絶なラストが胸に残る時代劇

Samurai Rebellion
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●こんなお話

 理不尽な武士道に振り回される侍の話。

●感想

 武士の世界を描いた時代劇で、主人公は刀の試し切りをするほどの腕を持つ武士。彼には親友でありライバルでもある仲代達矢さん演じる男がいて、冒頭から武士らしい静かな火花が散る。

 そんなある日、藩主の側室だった女性が、藩主を殴ったという理由でお暇を出され、町に戻される。藩からの命令で、その女性を主人公の息子の嫁に迎えろという話になる。理由も理不尽だし、最初は拒否するが、周囲の圧力には逆らえず、しぶしぶ承諾する。

 最初は不安視された嫁だったが、実は人格・所作ともに非常にできた人間で、主人公も息子も、自然と好感を持つようになる。主人公の妻は最初、姑として嫁をいびるが、嫁の実直な姿勢に次第に心を開いていく。

 しばらくして藩主の息子が急死し、跡継ぎ問題が発生。その結果、かつての側室であった嫁と、彼女が生んだ子供が再び注目を浴びることに。そして藩は「お嫁さんを藩主に返上しろ」という命令を出す。もはやただの道具のような扱いに、主人公たちは強く反発。親族会議での圧力にも屈せず、拒否の姿勢を貫こうとする。

 けど、嫁はだまし討ちのように藩に連れて行かれ、拒めば主人公一家は切腹という脅しまでかけられる。嫁は一家を守るために泣く泣く藩へ戻る決意をする。

 しかし、後日、「返上届け」ではなく、「この非道を全国に訴える」という嘆願状を携えて戻ってくる。これに藩の上層部は激怒。主人公一家に討手が差し向けられるが、主人公は戦うことを決意する。

 激しい戦いの末、主人公の息子は殺され、嫁も自決。主人公は孫を連れて江戸を目指すが、国境で待ち構えていたのは、かつての親友。職務として止めようとする親友との一騎打ちは熱く、勝利するも、直後に鉄砲隊に囲まれる。「もう江戸には行けぬ」と主人公が孫に訴えておしまい。

 物語は120分間、ひたすら理不尽な武家社会に翻弄される家族を描いていきます。平穏に暮らしたいだけなのに、命令ひとつですべてを壊され、耐えに耐えた末の大爆発。日本的なドラマ構造とエンタメ要素が合わさった、濃密な作品でした。

 ただ、主人公がなぜそこまで息子夫婦に入れ込むのかという点については、終盤での説明が少し冗長で。言葉で説明しすぎて、せっかくの余白や情緒が削がれる場面もあったと思います。また、クライマックス後の語りがやや過多で、テンションが下がるところもありました。

 それでも仲代達矢さん演じる親友の存在感が圧巻で、職務と友情の間で葛藤する姿は非常に心を打つものでした。最後に「子どもだけは助けろ」と一騎打ちを挑む姿は、静かで力強い感動を残ります。

 武士道の理不尽、家族の絆、そして戦う意志を描いた濃密な時代劇として、じっくり楽しめる一本でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2012/06/14 DVD 2024/05/18 U-NEXT

監督小林正樹 
脚色橋本忍 
原作滝口康彦
出演三船敏郎 
加藤剛 
江原達怡 
大塚道子 
司葉子 
仲代達矢 

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