映画【REVOLUTION+1】感想(ネタバレ):安倍元首相銃撃を描く衝撃作

REVOLUTION+1
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●こんなお話

 安倍元首相銃撃事件の容疑者をモデルにした人物の話。

詳細ネタバレあらすじ

 川上達也は、自分がなぜこのような人生を送ることになったのかを振り返るように、自らの過去を語っていく。達也にとって、かつての家族は父、母、兄、妹がそろった普通の家庭だった。父親は会社を経営しており、家計にも余裕があった。達也自身も大学への進学を目指せる環境にあり、兄は頼りになる存在で、妹はまだ幼く、母親も家族を支えていた。達也にとって、父親が生きていたころは家族が一つにまとまっている。

 しかし、その父親が自殺したことで、家庭の状況は急激に変化していく。父親の死によって家族の生活基盤は崩れ、達也は大学への進学を断念することになる。将来に向けて進むはずだった道が突然閉ざされ、家族のなかにも、それまでにはなかった変化が生まれていく。

 兄もまた病気を患い、癌の治療を受けることになる。さらに病気の転移による後遺症で片目を失明し、それまでのような生活を送ることができなくなった兄は、次第に自暴自棄になっていく。妹も、父親が亡くなったことで生活環境が大きく変わり、以前とはまったく違う貧しい暮らしを強いられる。家庭の変化に戸惑った妹は、次第に反抗的な態度を見せるようになる。

 父親が亡くなり、兄が病気になり、達也自身も大学へ進む道を失う。家族を支えていたものが一つずつ失われていくなかで、家族は少しずつばらばらになっていく。自殺未遂をする達也は病院で宗教二世の女性が慰めてくれる。

 その後、母親は宗教団体に入信する。母親は父親が残した生命保険などの財産を教団への献金に使うようになり、家族の生活よりも宗教団体への献金を優先するようになっていく。父親が家族のために残した金も次々と献金に回され、家庭に残された財産は失われていく。

 達也の家族は経済的にも追い詰められ、最終的に母親は自己破産するまでに至る。父親を失ったことで家族の生活が苦しくなったにもかかわらず、母親は宗教団体への献金を続けていく。

こうして達也は、自分たち家族の生活を壊した原因の一つとして、母親が信仰する宗教団体を強く意識するようになる。父親の死、大学進学の断念、兄の病気、妹との関係、そして母親による献金。達也の人生に起きたさまざまな出来事が、宗教団体への憎しみと結びついていく。

 兄が母親を宗教団体から取り戻そうとする。兄は母親を連れ戻すために教団の施設へ向かうが、そこで屈強な教団職員に捕らえられてしまう。

 達也は一時期、自衛隊に所属していた経験を持つ。その経験も背景となり、やがて自宅の部屋に閉じこもって銃を作り始める。達也が最初に考えていたのは、自分の家族を苦しめた宗教団体への復讐だった。宗教団体そのものを攻撃し、家族を壊したと考える相手に復讐することで、自分の人生に決着をつけようとする。銃を製造中の隣人の女性は革命について語り、達也に理解を示そうとする。

 しかし、達也の怒りは次第に宗教団体だけではなく、その団体と政治的な関係を持つ人物へと向かっていく。達也の部屋には政治家の写真が貼られており、そのなかには安倍晋三の姿もある。達也は、宗教団体と政治の関係を問題視し、その関係を象徴する人物として安倍晋三に目を向けるようになる。

 演説会場には多くの人が集まっている。達也は人混みのなかで標的を待ち、銃を手にしてその時を迎える。そして、演説を行っている政治家に向かって銃を発砲する。

 達也は銃撃を終えた後、その場から逃走することなく取り押さえられておしまい。

●こんなお話

 安倍晋三元首相銃撃事件が起きてから間もない時期に、これほど早く映画という形で事件を題材にしたことには、作り手の強い情熱を感じました。実際の事件から時間を置いて作品化する方法もあるなかで、事件直後の社会に対して映画という形で問いを投げかけようとした姿勢は、とても強烈です。

 ただ、個人的には、その強い作り手の意志やメッセージ性が、作品そのものへの入り込みやすさを妨げてしまった印象もあります。

 劇中では、達也が病院で出会う宗教二世の女性や、銃器を制作する部屋の隣人の親が革命家の女性、そして妹など、達也の周囲に複数の人物が登場します。彼女たちはそれぞれの立場から達也に寄り添い、彼の苦しみや考えを理解しようとします。

 しかし、個人的には、その人物たちが突然登場し、比較的短い時間のなかで達也に対して自分の心情や過去を語っていく展開には、少し戸惑ってしまいました。なぜこのタイミングでこの人物が現れるのか、なぜ達也にここまで深く寄り添うのかという部分が、十分に積み重ねられていないように感じられたからです。

 特に、達也の人生を描く物語のなかで、周囲の人物たちが彼の気持ちを理解する存在として配置されているため、登場人物同士の関係性よりも、作品が伝えたいメッセージが先に見えてしまう場面もありました。人物が何を考えているのかを観客自身が想像する余地よりも、作り手側から答えを提示されているように感じてしまった部分があります。

 また、作品の上映時間を考えると、長く感じてしまう場面もありました。前衛舞踏を思わせるような身体表現が続く場面などは、作品のテーマを表現として意図されたものだと思いますが、私自身はそこにあまり入り込めず、物語の流れが止まってしまったように感じました。

 もちろん、こうした表現をどう受け取るかは完全に好みの問題です。足立監督が事件そのものを単純に再現するのではなく、演劇的、前衛的な表現を取り入れながら、事件の背景にある社会や政治、宗教について考えさせようとした意図なのかもしれません。

 ただ、私としては、もう少しドキュメンタリーに近いタッチで、実際に何が起きたのかを淡々と描く作品のほうが好みでした。事件を起こした人物の人生を追いながら、家族に何があったのか、宗教団体との関係がどう変化したのか、政治との関係をどのように認識していったのかを、できるだけ事実に近い形で積み重ねていく作品を期待していた部分があります。

 そのため、本作のように作り手の主張やメッセージが前面に出た作風には、正直なところ、少し距離を感じてしまいました。

 一方で、事件を単なるセンセーショナルな題材として消費せず、なぜ一人の青年が政治家を狙うまでに至ったのか、その背景にある家族の問題や宗教団体との関係に目を向けた点には意味があると思います。安倍元首相銃撃事件を、犯行そのものだけでなく、犯人が抱えていた家族の問題や宗教との関係から描こうとしたことは、本作の大きな特徴です。

 ただ、私自身は、そのテーマを描くのであれば、もう少し人物の感情や出来事を丁寧につないでほしかったというのが正直な感想です。達也の人生を理解するための情報は提示されますが、周囲の人物が突然現れて心情を語る場面や、物語の途中で長く続く前衛的な表現が入ることで、かえって達也自身の物語に集中しづらくなった部分がありました。

 実際の事件を題材にした作品として非常に早い段階で公開されたこと、その事件の背景にある宗教と政治の関係を正面から扱ったことは大きな特徴だと思います。その一方で、私の好みとしては、作り手のメッセージを前面に押し出すよりも、事件に至るまでの出来事を一つずつ積み重ね、観客自身に考えさせるようなドキュメントタッチの作品のほうが合っていました。

☆☆

鑑賞日:2026/07/25 U-NEXT

監督足立正生 
脚本足立正生 
井上淳一 
出演タモト清嵐 
岩崎聡子 
高橋雄祐 
紫木風太 
前迫莉亜 
森山みつき 
イザベル矢野 
木村知貴 
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